KEQ-2000
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高音質イコライザアンプ

KEQ-2000

  28,000円


 近年、オーディオ用オペアンプの性能向上は目覚しいものがあります。歪率が0.0003%であったり、 ダイナミックレンジが120dBとか、一昔前では考えられないような数値となっています。しかし、 オーディオマニアの間では、音質はやっぱりディスクリート回路というのが定説になっています。
 そこで、もっとも厳しい性能が要求されると思われるMCイコライザアンプをオペアンプで 実現しました。
 結果、たいへんすばらしい音質を低価格で実現することができました。現代に生き返った アナログレコードの高音質を楽しむことができます。

→開発ブログ


製作記事

コンセプト システム構成 EQアンプ 電源回路 ケース 基板 製作 試聴

コンセプト

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 高音質イコライザーアンプはKEQ-1000で大成功しました。しかし、高音質なコンプリメンタリFETを 使用しており、あまり低価格にはなりません。また、現代のオペアンプは超低雑音、低歪率なものが 開発され、その性能に目を見張るものがあります。
 そこで、音質を重視しつつ、手軽に楽しめる低価格なイコライザアンプに挑戦しました。 今回は以下のようなコンセプトで手軽なイコライザアンプを設計します。

    KAR-2000の基本コンセプト
  1. 低価格で手軽なイコライザーアンプ
  2. 安かろう悪かろうではなく、アナログレコードの音のよさを引き出す高音質も重視。
  3. MCカートリッジに対応できること(MC専用)。
  4. 高音質ADコンバータを追加できる構造とすること。


システム構成

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【全体構成】
 イコライザアンプの全体構成は、電源部、イコライザアンプ部のシンプルな2部構成です。 好みによって、異なるオペアンプ(リニアテクノロジー:LT-1028/アナログデバイセズ:AD797)を 試すことのできる回路構成としています。また、後でADコンバータを追加できるデジタル対応可能な 構造とします。
  1. 電源部
     イコライザアンプの電源電流は約0.2A程度確保できれば十分ですが、後でADコンバータを追加でき、 かつ余裕を持って再生できるよう0.8Aを確保します(最低でも0.5A以上)。本来ではトロイダルトランスの 方が誘導ノイズ的に有利ですが、今回は低価格を実現したいので、EIコアタイプのトランスを使用 します。結果としては、十分な音質を確保できました。
  2. イコライザアンプ
     イコライザアンプはコンパクトにまとめた専用基板を起こしました。太く短く配線します。 1chあたりオペアンプを2個使用して、イコライザアンプ部とフラットアンプ部の2段構成をとり、 CDと同様のライン出力(2Vrms)を実現します。イコライザアンプ部に過度なゲインを かけるよりも2段構成で増幅した方が音質的に有利です。フラットアンプにはDCサーボ回路を 構成し、カップリングコンデンサを廃止します。電源投入時、DCサーボが安定するまで、出力が 大きく揺らぐので、ミュート回路を設けて安定してから出力を有効にします。もちろん、リレーの接点に オーディオ信号が通らない構造とします。
     部品は基本的にオーディオ用を使用します。コンデンサはフィルムコンデンサあるいはオーディオ用 電解コンデンサ、抵抗は金属皮膜抵抗を基本とします。
  3. その他
     100V系については、ターンテーブルの電源も合わせてON/OFFできるように、Switched の100V 出力を設けます。

 以上のような構成によるブロック構成を図1に示します。


図1:全体ブロック図


EQアンプ

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 本機のイコライザ回路を図2に示します。LT-1028もしくはAD797をベースにしたイコライザアンプ部、 LME49720やOPA2604をベースにしたフラットアンプ部の2段構成となっています。LT-1028とAD797は、 オフセット電圧の調整方法が逆ですので、選択できるようにしました。回路設計上、1段目と2段目の 間に1uFのカップリングコンデンサを入れていますが、実際はショートして使用していません。
 2段目は、通常の非反転増幅回路です。大きな増幅率を持たせているわけではないので、 高周波発振防止用のコンデンサは入れません。2回路入りのオペアンプを使用してDCサーボを 構成しています。非常に一般的な回路なので、高音質といわれる様々なオペアンプを試すことが できます。
 出力には、リレーを入れ、DCサーボが安定するまでグランドにショートします。

図2:イコライザアンプ


電源回路

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 図3に本機の電源回路を示します。高速なファーストリカバリダイオードを 使用し、大容量6,800uFの平滑コンデンサで整流回路を構成します。安定化電源は 3端子レギュレータを利用し、高速オペアンプで低雑音化した高安定高精度な レギュレータとしました。この回路も黒田徹氏の基本設計によるものです。
 出力電圧を高速オペアンプで比較し、3端子レギュレータのGND端子電圧を調整することに より高精度低雑音を実現した±15Vの安定化電源です。オペアンプにはオーディオ用高音質 かつ±24Vまで動作可能なOPA2604を使用して電源応答性を高速化します。通常の3端子 レギュレータよりも低雑音であり、通常の3端子レギュレータと同じ保護機能、安定性が 得られます。
 電源電圧は多回転トリマで調整し、+側、−側の電圧をテスタで計測可能な範囲で 最大限正確に合わせ込みます。重要なのは+側・−側の相対誤差で、上下電圧が可能な限り 等しくなるようにすることです。本機では上下10mv以内の差に収まるように調整します。 イコライザアンプ回路はDCサーボ機能を持っているので多少ずれても大丈夫ですが、 音質としては上下対称が一番有利です。
 出力安定用のコンデンサも330uFオーディオ用電解、1uF,0.1uFオーディオ用 フィルムコンデンサを使用し、大容量から小容量までバランスよく構成することによって クリーンな電源を実現しています。基板上の配置も大容量→小容量へ順次並べます。

 Mute回路は、CPUのリセット回路用の電源監視IC(M51957)を使用します。電圧モニタ 端子が閾値を越えた後、約2秒後にONします。この出力を利用して、スイッチング トランジスタを介してリレーを駆動します。リレーは12V用のものを使用しますので、 一般的なシリコンダイオードを3個直列に接続して電圧を下げ、約12Vとします。


図3:電源回路


ケース

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【シャシー】
 今回はコストも重要なファクターなので、ケースは汎用ケースを使用します。 タカチのUCシリーズのケース(アイボリー色、型番はUC26-7-20AA)を使用し、 各部品は内部シャシーに取り付けます。電源部とアンプはシールド板で分離します。 PHONO入力とアンプ入力まではノイズ的に最良になるよう、最短距離で接続します。
 フロントパネルは電源スイッチのみのシンプルな構成であり、リアパネルは 100V入力、Switched100V出力、PHONO入力、ラインアウトのみです。100V入力は ACインレットは使用せず、直接100Vケーブルを引き出します。

  →シャシー図面



図4:デザイン検討図面


基板

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【イコライザアンプ基板】

 オーディオ回路は、配線は太く短い方が特性としてはよくなるはずですので、基板の パターンは太く短く、部品配置をコンパクトにまとめます。また、左右チャンネルは 対称パターンが基本ですが、100%対象にこだわるのではなく、太く短く配線することを 優先します。グランドラインは基板の中央に太く入れ、左右のセパレーション、 グランドレベルの安定性を確保します。さらに、金属スペーサを経由してグランドを シャシーに落とすことができるように4隅に接続パターンを設けています。4隅のどれかの 金属スペーサを介してシャシーグランドに落とす場合は半田等によりショートします。
 出力部は、ミュート用のリレーが入りますが、できるだけ太く短く出力端子と 接続します。入力も出力もコネクタは使用せず、シールド線を直接半田付けすることを 前提としますが、ネジ式ターミナルも使用できます。
 イコライザ用のオペアンプ周辺は、LT-1028とAD797の両方に対応できるよう、 オフセット端子と調整用の半固定抵抗の電圧をジャンパ線で選択するパターンと なっています。フラットアンプ側は一般的な2ch入りDIPパッケージのオペアンプを 使用するパターンとなっています。
 結果、図6のような基板となりました。コンパクトかつ信号の流れがスムースな 美しい基板パターンです。良い音のする基板というのは、パターンも実装も美しく 見えます。

  →PCBEパターンデータ



図6:アンプ基板
【電源部基板】

電源部は安定化電源とミュート回路を一つの基板にまとめたもので、KEQ-1000と 同一の回路ですが、基板パターンとしては改良しています。
 入力端子から整流ダイオードを経て平滑コンデンサに入りますが、途中に チョークコイルを入れることができるようにします。電源経由で混入する 外部ノイズを遮断する目的ですが、基本的には必要ありません。
 3端子レギュレータには、少し大きめの放熱器を取り付けることができるように 設計し、放熱器は忘れずにグランドレベルになるようにします。
 グランドおよび+−のラインは可能な限り太いラインにしますが、 コンデンサの配置に注意します。電源出力端子に向けて 大容量コンデンサ→低容量コンデンサを並べ、1uFフィルムコンデンサは 出力端子のすぐ近くに配置し、クリーンな電源を出力します。
 ミュート回路は基板の端を利用してできるだけコンパクトに配置します。 ミュート回路は直接音質には影響しないので、表面実装のコンデンサや抵抗を 使用します。
 シャシーグランドに落とすポイントですが、AC入力側、DC出力側のどちらかで 金属スペーサ経由で落とせるように選択可能にしておきます。どちらかを半田で ショートすることによってシャシーグランドに接続します。

  →PCBEパターンデータ



図7:電源回路基板
基板パターンはフリーの基板設計ツールPCBEを使用しました。


製作

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 これで全ての設計が完了しました。製作を開始します。

【基板製作】
 基板は外注します。作る-comの初期製作ではブルガリアのOLIMEXで基板を製作して もらっています。非常に低価格ですが、品質としては全く問題ありません。
 アンプ基板も電源基板も片面パターンなので自作も可能です。基板材質はエポキシでも いいですが、できるだけガラスエポキシ(FR-4)を使用したほうがいいでしょう。 なお、自作する場合は廃液の処理をきちんとしましょう。

【基板実装】
 基板が出来上がったら部品実装です。背の低い部品から順に半田付けしていきます。 今回はほとんどリード部品ですので、こてを先に当ててから半田を付けます。 いも半田だけは避けるように注意してください。電源平滑用の大容量コンデンサ、 放熱器は小型の半田ごてでは熱容量不足になるかもしれないので、30W以上の半田ごてを 推奨します。
 実装は部品の向きに十分注意してください。特に電解コンデンサ、トランジスタ(FET)、 オペアンプ等は注意してください。
 イコライザアンプ基板のオペアンプはソケットを使用してもかまいません。大半の オーディオ用オペアンプが使用可能ですので、様々な種類のオペアンプ差し替えてみるのも 楽しみになると思います。

図10:イコライザ基板

図11:電源基板

【ケースの製作】  まず最初にタカチのケースUC26-7-20AAの内部シャシーを作成します。両サイドの ケース連結板(アルミ)に内部シャシー用L字アングルを付けるためのφ3.5mmの穴を開けます。 内部シャシーは、1.5mmのアルミ板をこのL時アングルに付けます。基板、トランス、 ヒューズボックス、シールド板等の内部部品は全て内部シャシーにつけるように現物あわせで 穴を開けます。これで、部品取り付け用のネジがケース外側からは全く見えず、きれいな ケースになります。
 内部シャシーを加工したら、次にフロント・リアパネルを加工します。両パネルとも 端子やスイッチ類等が内部シャシーに引っかからないように位置を併せます。 フロントパネルは電源スイッチとLEDの穴だけですが、電源スイッチに波動スイッチを 使用する場合は角穴になりますので、丁寧に加工してください。
 リアパネルは、ACアウトレット、AC入力口、GND端子、入出力RCA端子の穴をあけます。 ACアウトレットのみ角穴となります。


図12:シャシー



【組み込み】
 基板、トランス、各種コネクタを組み込みます。接続は非常にシンプルですので、 特に問題なく組み込めると思います。
  1. 電源トランスを取付け、100Vラインを配線します。ACアウトはスイッチドになるので、 一度前面のスイッチを経由してリアの100V出力に接続します。スイッチと反対側は ヒューズを経由してトランスに接続します。
  2. 電源基板を取り付け、電源トランスとの間を配線します。±17Vと0V(センタータップ)の 3本だけです。この状態で一度電源スイッチを投入し、±15Vの出力電圧を調整します。 電源調整ができたらLEDの配線をしてしまいます。LEDは、φ3mmのものを接着剤で固定 します。熱収縮チューブを使用してショートしないようにしましょう。
  3. イコライザアンプ基板を取り付け、RCA入力端子〜アンプ基板、アンプ基板〜RCA出力端子 までを接続します。2芯シールド線を使用し、入力は、RCA端子側でシールドと GNDラインを接続し、出力は基板側でシールドとGNDラインを接続します。
     特に入力の配線は最短距離になるように注意してください。配線が長ければ それだけノイズや誘導ハムを拾いやすくなります。
     アンプ基板の出力側からシャシーグランドに落とします。今回はこの部分でシャシーグランド に落とすのが最適でした。
  4. 電源基板とアンプ基板のリレー端子を接続します。電源SW投入後2〜3秒でリレーがONし、 ミュートスイッチによってリレーがON/OFFすることを確認します。
  5. 最後にアンプ基板の電源を配線します。+15V、0V(GND)、−15Vは間違えないように 色分けをして配線しましょう。+/−を間違えると確実にオペアンプが壊れます。
    これで全ての配線完了となります。

図14:電源部の配線



図15:アンプ部の配線





図17:配線完了




図19:フロントビュー



図20:リアビュー


試聴

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 試聴は以下の機器で行いました。
カートリッジ:audio-technica AT33PTG
プレーヤ: KAR-1000
ターンテーブル Technics SP-25
トーンアーム FR-64fx Pro
プリアンプ:オリジナルプリアンプ
メインアンプ:オリジナルFETアンプ
 本機でアナログレコードを聴くと、現代のオペアンプの性能の高さに驚かされます。 低域から高域までフラットに伸びており、リアリティのある音で、特に高域が 美しく響きます。全体としてはさすがにKEQ-1000の方が上回りますが、本機でも 十分高音質です。
 フュージョン系は渡辺貞夫、カシオペア、シャカタク、ハーブアルパート、 ジャズ系は、ステファングラッペリ、ビルエバンス、クラシック系はラベック姉妹、 イムジチ管弦楽団、ポップス系はシャーデー、山下達郎、阿部恭弘と節操なく 次々に聞きました。
 どの曲を聴いても、リアリティのある美しい音質です。
低価格、高音質を望む方にピッタリのイコライザーアンプです。


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